1982 年 31 巻 1 号 p. 32-36
ガラスビーズの表面にオクタデシル基を導入した吸着剤(C18-結合型ガラスビーズ)を用いて,水中のppbレベルの鉄をバソフェナントロリン錯体として吸着させ,少量のエタノールとジメチルスルホキシドの混合溶媒で溶出し,吸光光度定量する方法を検討した.この方法では,少なくとも100倍の濃縮が可能であり,(0.6~5)μgの鉄を精度よく定量できる.
カドミウム,ニッケル,コバルト,銅などは多量に共存すると妨害するが,その他のイオンの多くは妨害しない.
河川水中の鉄の定量に応用し,既知量の鉄を加えたときの回収はほぼ定量的であった.又,C18-結合型ガラスビーズとアンバーライトXAD-2及びXAD-7を用いて錯体の吸着・溶出挙動を比較したところ,ガラスビーズのときに最も速やかに溶出し,従って高い濃縮率を得ることができた.