1983 年 32 巻 10 号 p. 605-610
ベンゾイルアセトン(BA)及びトリフルオロアセチルアセトン(TFA)のコバルト(III),クロム(III),ロジウム(III)キレートの幾何異性体の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離と定量法を検討した.BAキレートに対して,塩基性アルミナカラムを用い,ヘキサン-2-プロパノール(100:0.15)を溶離液に用いたとき,又,TFAキレートに対して,シリカゲルカラムを用い,ベンゼン-ヘキサン(60:40)を溶離液に用いたとき,各キレートのシス,トランス異性体は(9~28)分で良好に分離した.カラム温度を一定{(22.0±0.1)℃}にすることにより,保持時間とピーク高さの再現性は良好になり,検量線は(10-6~10-3)mol/lの濃度範囲で直線を示し,回帰直線の相関係数は平均0.9995であった.異性体の検出限界(S/N=4)は,(1~6)×10-6mol/lであり,2μlの注入量に対し,(1.2×10-11~2.8×10-12) molに相当する.回収実験での回収率は平均98.8%, 定量値の変動係数は平均13%であった.