分析化学
Print ISSN : 0525-1931
ジエチルジチオリン酸塩を用いる鉄(III)及び銅(II)のヘキサン抽出-吸光光度法
Ο,Ο'ジアルキルジチオリン酸塩の分析化学的応用(第1報)
林 謙次郎佐々木 義明田頭 昭二猪股 茂博力武 純子久富 由紀子鈴木 光泰
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1984 年 33 巻 5 号 p. 247-252

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抄録

ジエチルジチオリン酸塩(dtp-)を用いる鉄(III)及び銅(II)のヘキサン抽出-吸光光度法において,過酸化水素の添加が吸光度の増加と再現性の向上をもたらすことを見いだし,この場合の定量条件を明らかにした.過酸化水素0.01mol dm-3及びKdtp0.1mol dm-3を含むpH2の水相10cm3から(5×10-6~3×10-4)mol dm-3の鉄(III)及び(2.5×10-6~1×10-4)mol dm-3の銅(II)が10cm3のヘキサンに定量的に抽出され,それぞれ波長590及び419nmにおいて吸光光度定量できた.モル吸光係数はそれぞれ3.5×103及び1.26×104mol-1dm3cm-1であった.なお,過酸化水素は配位子による金属イオンの還元を抑制しているものと考えられる.金属の分配比に及ぼすdtp-濃度の影響を詳細に調べ,[Fe(dtp)3]が抽出化学種であることを推定するとともにこの錯体の分配定数(51.9)及び全生成定数(1.95×104)を得た.しかし,銅の抽出挙動は複雑でその機構は解明されなかった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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