抄録
石炭水素化分解の反応機構を調べるために,トリチウムで標識付けした気相水素,又は同じ標識付けしたテトラリンに,少量の炭素-14で標識付けしたナフタレンを加え,太平洋炭の液化反応を行った.石炭25g,テトラリン又はナフタレン溶媒75gに,触媒0~5gを添加して,400~440℃で30分間反応させた.反応生成物を蒸留,ソックスレー抽出で分離しガスクロマトグラフィーで分析した後,各成分の放射能濃度を液体シンチレーションカウンターで定量した.液化率はテトラリン溶媒では触媒の有無によらず,主として溶媒からの水素により液化し,触媒は液化物の軽質化に寄与した.ナフタレン溶媒では触媒がないと反応は進みにくくなった.触媒の添加により溶媒の水素化が起こり,一部は気相水素が直接反応して液化率を向上させた.トリチウムの移行過程は触媒の存在下で複雑になり気相水素と溶媒からの移行は異なる結果を示した.