分析化学
Print ISSN : 0525-1931
原子吸光法による港湾底質土中のスズの定量
高橋 一暢大八木 義彦
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1986 年 35 巻 7 号 p. 585-589

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抄録

原子吸光法による港湾底質土中のスズの定量法について検討した.湿式分解のための酸の組み合わせとして(a)12M塩酸-16M硝酸(3:1)及び(b)16M硝酸-18M硫酸(3:1)の2種類によって底質土を加熱分解し,空気-水素の多燃料フレームを用い,測定波長224.6nmにおいて標準添加法により原子吸光分析を行った。その結果,(a)12M塩酸-16M硝酸(3:1)の湿式分解法が,他の湿式分解法と比べて感度良く分析できることが分かった.この場合硝酸によって,スズが不溶性のメタスズ酸を生成する可能性が考えられたが,スズの回収率として103~108%を示したので,これは塩酸が存在することにより,硝酸とスズとの反応によるメタスズ酸の生成を抑制しているものと考えた.本法を用いて,ハマチを主とする養殖場海域(和歌山県西牟婁郡白浜町)の底質土中のスズを定量したところ,スズ含有量は乾重量当たり8.8~29.3μg/gの範囲を示した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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