1987 年 36 巻 3 号 p. 159-163
大気中の硫酸ミストの定量法として,テフロンフィルター上に捕集した大気粉じん中の硫酸ミストを,ベンズアルデヒドで選択的に抽出し,蒸留水で逆抽出した後,イオンクロマトグラフィーにより定量する方法を検討した.逆抽出の際にベンズアルデヒドが水相に溶解し酸化して生じた安息香酸イオンは,硫酸イオンのイオンクロマトグラフィーに大きな障害となる.この安息香酸イオンの除去方法として,亜鉛還元法,ベンゼン抽出法,冷却法などを検討したが十分な効果は得られなかった.そこで,イオン排除クロマトグラフィーを用い,硫酸イオンと安息香酸イオンをまず分離し,硫酸イオンを含む分取した試料溶液をイオンクロマトグラフに再注入する方法により,硫酸イオンを十分に定量できることが分かった.本法を用いて横浜市日吉で,1985年1月~10月に測定した大気中の硫酸ミスト濃度は,0.13~0.95μg/m3であった.