1989 年 38 巻 11 号 p. 601-607
同一の基質及び反応に対する特異性を持つ,由来の異なる2種類のサルコシンオキシダーゼ(SOD:from Arthrobacter sp. 及びSOX: from Bacillus sp.)について,メディエーターを用いた電気化学的手法によって酵素反応の解析を行った.SOD,SOXいずれに対しても,Mo(CN)84-がメディエーターとして最も有効であったが,他のメディエーターの選択性については2種の酵素で若干違いが見られた.基質及びメディエーター{Mo(CN)84-}存在下で,酵素反応に基づく触媒電流から酵素反応速度式を評価した.その結果,SODの酵素反応はV=Vmax/(1+Kml/[S]+Km2/[M])で表される通常のミカエリス型の反応機構であることが明らかとなった.一方,SOXは,活性中心が1個であるにもかかわらず,その酵素反応速度式は基質,メディエーターに対してほぼ二次の依存性を示し,SODとSOXは,その酵素反応の細部については,互いに異なる挙動を示すことが明らかとなった.