分析化学
Print ISSN : 0525-1931
2,4,6-トリ-2-ピリジル-1,3,5-トリアジン担持活性炭を用いる吸着分離/黒鉛炉原子吸光法による微量ルテニウムの定量
新井 信正南澤 宏明鈴木 茂奥谷 忠雄
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1996 年 45 巻 10 号 p. 921-926

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抄録

Ruは2,4,6-トリ-2-ピリジル-1,3,5-トリアジン(以下,TPTZと略記)と錯体を生成する.このTPTZを担持した活性炭(以下,TPTZ-ACと略記)を用いて,水試料中の微量Ruを吸着させた後,少量の水に分散させ,その懸濁液の一部を直接黒鉛炉に注入し,原子吸光測定する.用いる黒鉛管について検討した結果,未処理黒鉛管に比べ,Ce処理黒鉛管及びPd処理黒鉛管が,それぞれ,未処理黒鉛管の約2.5倍,約2倍の吸光値を示したが,パイロ処理黒鉛管は約5倍の最も高い吸光値を示し,繰り返し精度も良好であった.RuはpH6.0~8.0の範囲でTPTZ-ACに短時間で定量的に吸着した.本法の定量限界はRu0.08μg/100cm3(S/N≧3),すなわち0.8ppbである.Ru1.0及び0.5μgを含む試料溶液についての繰り返し精度(n=5)はそれぞれ,4.1,4.7%である.Ruの定量時にCo,Cuなど多くの金属イオンは10mg程度共存しても妨害しないが,Feの共存は負の影響を示した.しかし,1,10-フェナントロリン,チオ尿素,フッ化アンモニウムなどの添加により,Fe共存下でもRuの定量が可能となった.本法を水試料中の微量Ruの定量に応用した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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