分析化学
Print ISSN : 0525-1931
水熱分解ガスクロマトグラフィーによる道路上たい積粉じん中のフェノール樹脂の定量
西野 亮斎藤 貴
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1996 年 45 巻 10 号 p. 915-920

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抄録

メチル化を伴う水熱分解GCにより,アニソールを指標化合物とした道路上たい積粉じん中のフェノール樹脂濃度の定量法を検討した.粉じんをテトラヒドロフランを用いて超音波抽出して得られた抽出液9μlを,メチル化剤である水酸化テトラメチルアンモニウム0.5μlと共に,長さ18mm,内径0.8mmのガラスカプセル中に封入し,カプセルをキューリー点が235℃の強磁性体のカップに入れた後,キューリーポイント型熱分解装置で9秒間水熱分解した.次に,カプセルを取り出し一端を開封後,再びキューリー点が445℃の強磁性体のカップに入れて熱分解装置で9秒間熱脱着を行う.熱脱着された水熱分解生成物はオンラインに接続したGCにより分離分析を行った.生成したアニソールの生成量とフェノール樹脂濃度との間には比例関係が得られ,アニソール生成量の再現性も300μgの樹脂を分析したときに相対標準偏差で3.6%(n=6)と良好であった.本法により道路上たい積粉じん中のフェノール樹脂濃度を分析したところ,120~250μg/g-dustが検出され,更にそのフェノール樹脂粉じんに起因するアスベストの濃度は0.044~0.092wt%であると推定された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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