分析化学
Print ISSN : 0525-1931
EDTA溶液によるマグネタイト(Fe3O4)溶解反応の速度モデル
田村 紘基高崎 新一古市 隆三郎
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1998 年 47 巻 7 号 p. 397-403

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抄録

マグネタイトは土壌,鉄鉱石,鉄鋼材料腐食スケールなどの成分であり,その湿式分析では前処理としてまず溶解が行われる.分析における試料溶解法を合理的に設計し溶解操作条件を最適に制御するために,溶解反応のモデルの確立が重要である.本研究ではEDTA(H4Y)溶液によるマグネタイトの溶解速度挙動を検討し,次の逐次反応によって速度をモデル化した:1)マグネタイトの格子鉄イオンと,n個のプロトンを付加したEDTA化学種HnY(4-n)-との反応によるキレート生成,2)溶出鉄イオンの対として残存する格子酸化物イオンとプロトンとの反応による水分子の生成.得られた速度式により,実測の溶出鉄イオン濃度の増加挙動と溶出鉄イオン濃度がpH2.3で極大を示す挙動がよく再現できた.プロトン数の異なる5種類のEDTA化学種(n=0~4)について,pH1.5~3.3の領域でモデルパラメーター(速度定数)とpHの関係を検討し,溶解にあずかるEDTA化学種をH2Y2-(n=2)と推定した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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