2006 年 61 巻 12 号 p. 905-911
湯川秀樹と朝永振一郎は,家庭環境や教育を受けた環境に共通する点が多い.その一方で研究の手法や方向性には対照的な点が数多く見られる.この二人は,科学史上の様々な場面にともに現れ,それぞれの個性に応じた振舞いを見せてくれる.湯川と朝永が教育を受け,研究者として活躍した20世紀前半期には,日本の社会と科学研究もいくつもの変化をくぐり抜けたが,二人の個性の織りなす逸話を追いかけることで,日本の科学の歴史的な歩みの一つの断面も明らかにすることができる.