抄録
異常分散媒質中での真空中の光速度cより速い波束の伝播など,群速度の意味をめぐってはSommerfeld, Brillouinから始まって長い議論が行われてきた.近年,冷却原子や固体の分極を外部光で操作する,もしくは,微小共振器やフォトニック結晶など光の波長オーダーの空間構造を制御することで,光速度よりも速い光,著しく遅い光,あるいは光の凍結など,波束の伝播制御をする試みがなされている.従来の群速度は,屈折率の実部の1階微分により定義されているため,波束が急峻な分散媒質を長距離伝播する場合には破綻する.本稿では,情報速度など媒質中のさまざまな速度を群速度との関係で議論し,従来の群速度が破綻する条件下でも意味を持つ群速度の定義について解説する.