抄録
熱容量の概念も, その測定方法の原理も明確であるためか, それらの研究結果の精度や確度を忘れた研究がしばしばみられる. そこで, 熱容量の測定が熱物性や化学平衡論の発展に果した重要な役割の歴史的な現状に至る姿を素描し, 今日の情報公害時代におけるそのあるべきデータ発表に対する研究者の態度にふれる. ついで相転移の熱容量測定による研究の歴史についてのべ, 高精確度測定が相転移研究に如何に重要な役割を演じつつあるかについて, 筆者らの研究室での経験の一端をとらえて, その二, 三の実例を紹介する.