1992 年 47 巻 7 号 p. 555-562
平滑な単結晶の表面に小角で斜入射した高速イオンは表面から1オングストローム程度の距離を表面とほぼ閉口に運動した後反射される. この高速荷電粒子に対して, 固体の価電子の遮蔽は完全には追求できず, 荷電粒子と等位相速度で動く表面電子の波状分布が生じる. これは表面航跡と呼ばれる. イオン軌道に沿って小さな衝突係数の衝突は起こり難いことから, 高速イオンの非弾性散乱過程はこの表面航跡に大きく影響される. 表面散乱した高速イオンのエネルギー損失, 分子イオンの解離過程, コンボイ電子の生成を中心にして固体表面電子の動的応答についての最近の研究を紹介する.