1994 年 49 巻 8 号 p. 621-627
遷移金属酸化物が物性科学的に興味深い対象であることは,古くから認識されてはいたが,理論的な取扱が困難な強い電子間相互作用-電子相関効果-をあらわに考慮しなければならないこともあって,その電子物性の研究は半ば冬眠状態にあった.しかし,銅酸化物系高温超伝導の熱病を契機として,強相関電子系の物理の理解が進みはじめ,いまや「強相関電子」は物質科学のみならず,次々世代電子材料の可能性を語るうえでの,不可欠なキーワードとなりつつある.そのプロトタイプとしての3d遷移金属酸化物を例にとり,価数(電子数)制御によって出現するモット転移近傍の異常金属相の物性とその材料物理としての展開の可能性を探りたい.