1994 年 49 巻 8 号 p. 636-642
よい結晶を作るには,平らな結晶表面で原子ステップの前進による結晶成長を実現することが必要である.この原子ステップのメゾスコピックなゆらぎや形態形成は,熱平衡に関する物性や結晶成長機構を色濃く反映している.また平衡状態からのはずれが大きくなると,いろいろな不安定化が起きてステップや結晶表面の形態が変化する.最新の顕微法と結晶育成技術によって原子ステップの直接観察と成長の制御が可能になり,理論と実験の直接の対比も夢ではなくなった.こうした原子ステップの運動を非平衡統計力学や拡散場中のパターン形成の研究の立場から眺めてみたい.