蛇口からポタポタと落下する水滴.時計仕掛けと感じられる水滴落下のリズムにも,実際には多様なゆらぎが含まれ,そこには低次元カオスが確かに存在する.これまでに実験によってカオス力学系としての多くの興味深い現象が確認されてきたが,それを生み出す水滴形成の物理とのつながりには多くの謎が残されていた.だが,最近行われた実験と流体力学的数値シミュレーションによって,系の力学的構造がしだいに明らかになってきた.さらに,これらの知見に基づいたバネのモデルは,系の多様な振舞に一次元離散力学系としての統一した説明を与えることを可能にした.最近の研究に基づき,水滴落下系の長時間挙動とその力学的構造について概説する.