電気伝導は非平衡の現象の中では一番なじみのあるものであるが,それを扱う理論は完成されているとはいい難い.現在使われている電気伝導の基礎理論には,久保の理論とランダウアーの理論がある.これらの理論は,共に1957年に発表されながら,ランダウアーの理論がよく使われるようになったのはこの十数年のことで,いわゆるメゾスコピック系の研究が盛んになってからである.応用する対象に制限はあるが単純明快な公式を与えるランダウァーの理論を,複雑ではあるが汎用性のある久保の理論と比べながら解説し,今後どのような発展が必要であるかを考える.