宇宙初期に存在していたと考えられるクォークがもはや核子や中間子内に閉じ込められていない相への転移に際しては,同時に「カイラル対称性」の回復という相転移が起きると信じられている.本稿ではこのカイラル相転移に伴って生じると考えられている「誤ったカイラル軸を持つ偽真空」のドメイン形成の力学について,非専門家向けに解説する.超相対論的原子核衝突実験によってこれらの相転移を実験室で観測できる可能性が現実的になってきた現在,このドメイン構造の物理は非平衡な環境下で進行する動的相転移過程の実験室として,広い分野の方々に興味をもって頂けると期待している.