日本物理学会誌
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磁性有機超伝導体の開発
小林 速男小林 昭子徳本 圓
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2001 年 56 巻 3 号 p. 162-168

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抄録

ベチカードやジェロームらが初めて有機超伝導体を報告したのは1980年のことで,現在はその20周年にあたっている.これまで研究されてきた多くの有機伝導体はπドナー分子と対アニオンで構成されたベチカード型伝導体であり,その電子物性は有機分子のπ電子系だけが関与するものであった.しかし,最近,磁性アニオンを用いることにより,反強磁性有機超伝導体や,超伝導-絶縁体転移を示す伝導体など「分子磁性体」と「有機超伝導体」の性質を兼ね備えた一群の磁性有機伝導体が開発され,新たな研究対象として浮上しつつある.電子構造的には,対イオンの従来の役割はπ伝導バンドにキャリヤーを発生させることであったが,これらの系ではこれに加えて,磁気物性を発現させる役割をも分担している.また,このことにより磁性・電気伝導を対アニオンの化学修飾によって連続的に制御することが可能となった.今後,有機伝導体を舞台に低次元性,超伝導,磁性が絡み合った新奇な物性の舞台が展開していくものと思われる.

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