日本物理学会誌
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ニュートリノとフレーバーの起源(<特集>ニュートリノの物理-小柴昌俊氏のノーベル物理学賞受賞を記念して-)
村山 斉
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2003 年 58 巻 5 号 p. 356-361

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抄録

湯川秀樹の予言した中間子を宇宙線で探索のさなか,1937年にニーデルマイヤー(Neddermeyer)とアンダーソン(Anderson)は透過性の高い粒子を発見した.これは後にミューオンと呼ばれる粒子で,今のところその性質は質量以外は電子と全く同じに見える.しかもミューオンは探していた湯川中間子ではなかった.これを受けてノーベル物理学賞受賞者ラビ(I. I. Rabi)は「いったい誰がミューオンなんかを注文したんだ?」と言ったという.ミューオンも電子もどちらも電荷はe,スピンは1/2,大きさは少なくとも10-17cm以下で,おそらく点粒子,そして弱い相互作用についても全く同じ振舞をする.このような電子の「第二世代」の存在は誰も予想だにしなかった.このように全く同じ性質を持っているように見えながら質量が異なる違う「世代」の粒子を,アイスクリームのいろいろな種類に譬えて,違う「フレーバー」と言う.はっきりいってフレーバーの起源は全く分かっていないといって良い.この小文ではフレーバーの理解について,特にニュートリノ振動の発見が与えた衝撃を解説する.

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