日本物理学会誌
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RHICでの高エネルギー原子核衝突実験の幕開け
秋葉 康之浜垣 秀樹
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2004 年 59 巻 5 号 p. 291-299

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抄録

世界最高エネルギーの原子核衝突型加速器であるRHICでの最初の3年間の実験で何が分かったかを解説する.RHICの主目的は,重い原子核同士を超高エネルギーで衝突させることにより,閉じ込めの破れた状態のクォークとグルーオンからできている超高密度の新物質,クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)を作り出すことにある.金-金の中心衝突で高横運動量粒子や逆側ジェットの生成が強く抑制されていること,そしてそのような抑制効果が重陽子-金衝突では見られないことから,RHICの重原子核衝突では非常に高密度の物質が生成されていることが確立した.金-金の非中心衝突で強いelliptic nowが発生していることが観測され,これはこの物質の急速な熱平衡化が起こっていることの強い証拠である.生成したハドロンの粒子組成や運動量分布は反応終状態が局所的熱平衡状態にあるとのモデルと矛盾しない.チャーム生成およびJ/Ψ粒子生成の測定も始まった.これらの測定はRHICで作られた高密度物質の性質をさらに解明するために重要である.

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