2005 年 60 巻 2 号 p. 95-101
近藤効果と超伝導は,共に,金属が低温で示す現象である.磁性不純物の電子と金属の伝導電子とがスピン一重項を形成して,低温において磁性不純物のスピンが消失するのが近藤効果である.一方,超伝導状態では伝導電子同士がクーパー対(それは,多くの場合,スピン一重項である)を形成し,それがボーズ凝縮している.したがって,超伝導体と相互作用している磁気モーメントは互いに競合的に影響し合う.この競合関係は近藤温度TKと超伝導転移温度Tcという両者の特徴的温度の大小関係により整理できる.この解説では(1)超伝導体中の磁性不純物の電子状態,(2)量子ドットを介して接する二つの超伝導体間のジョセフソン効果への近藤効果の影響,の二つの問題を取り上げ,近藤効果と超伝導の関係を概観する.