日本物理学会誌
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新発見の113番元素(<特集>超重元素の科学とその展望)
森田 浩介
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2005 年 60 巻 9 号 p. 698-707

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抄録

我々は, 独立行政法人理化学研究所の重イオン線形加速器からの70Znビームを209Bi標的に照射し, ビーム核と標的核との完全融合反応によって合成される, 原子番号113, 原子質量数278の原子核278113の崩壊を観測することに成功しました.ビームやその他実験にとってバックグラウンドとなる粒子から分離された目的の核は, 半導体検出器に打ち込まれ, そこで4回の連続したα崩壊をした後, 自発核分裂を起こして崩壊しました.4回目のα崩壊の崩壊エネルギーと崩壊時間, それに引き続いて起こった自発核分裂の現象と崩壊時間は, 既知の崩壊連鎖である266Bh(原子番号107)→262Db(原子番号105)のものと矛盾がなく, これらの崩壊に先立って起こった3回の連続したα崩壊は278113→274Rg(原子番号111)→270Mt(原子番号109)→という, これまでに報告されていない新同位体の崩壊であると結論づけました.観測された原子数はわずか1ですが, 保守的な言い方をすれば, 今回合成された278113は, 実験的に原子番号と質量数を決定されたものとしては, 原子番号, 原子質量数ともに最大のものであり, 新元素の発見の可能性があると考えています.

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