抄録
マルチ処理をニホンナシの早期成園化を目的に用いる技術として確立するため,樹の生育が増大した要因を調査するとともに,慣行的な方法と比べて生育が増大する効果があることを検証した.1.マルチ処理で樹の生育が増大する要因は,早期に地温が上昇することと土壌中の硝酸態窒素の濃度が高まったことが挙げられる.その結果,マルチ区では敷わら区に比べ,2mm 未満の根の発生量が1.8 倍に増大し養水分の吸収が促進されることや,新梢の生育が増大し葉数も1.5 倍に増大することで同化産物が多くなることが樹の生育を増大させた要因と推察される.また,マルチ区では敷わら区に比べ,新梢の基部径や主幹径が肥大し,5~10mm の根の発生量も増大していることから,樹の貯蔵養分が増大していることも推察され,このことは翌年の生育に好影響を与える可能性が高いと考えられる.2.1 年生苗木にマルチ処理を3 年間連用して行った結果,慣行的な方法と比べ,新梢の発生本数や総伸長量が2.1倍に,主枝や主幹径の基部径が1.2 倍に,根部の生体重が1.3 倍になるなど,樹全体の生育が増大した.3.マルチ処理は樹全体の生育が増大させ,定植後の活着促進,樹の骨格の早期完成及び配置できる側枝数の増大が可能となり,初期収量の増大に繋がることが期待される.