抄録
マルチ処理をニホンナシ苗木の定植後の管理方法の一つとして用いる技術として確立するため,新植及び改植圃場に定植された「幸水」大苗に対して,生産者にマルチ処理と栽培管理を2年間継続して行ってもらい,樹の生育や初期収量,果実品質に及ぼす影響を調査した.1.新植圃場では,マルチ処理により新梢の発生本数や総伸長量が無処理の1.6倍及び1.7倍に増大した.また,主枝の基部径や主幹径がともに1.1倍に増大した.樹の生育増大に伴い,着果数は無処理の1.9倍,収量は2.1倍に増大した.これらのことから,マルチ処理は,新植圃場における成園化を促進する技術として活用することが期待できる.2.改植圃場では,マルチ処理により新梢の発生本数が1.6倍に,結果枝長が1.4倍に,主枝の基部径や主幹径がともに1.1倍に増大した.また,樹の生育の増大に伴い,マルチ区の着果数は無処理の1.8倍,収量は1.9倍に増大した.3.改植圃場の無処理区では,新植圃場の無処理区と比べ,新梢の発生本数や総伸長量は56%及び62%となり,樹の生育が抑制された.一方で,改植圃場でマルチ処理を行えば,新植圃場の無処理区に比べ83~89%と向上したことから,いや地現象による生育抑制を改善する効果があると考えられ,改植を促進する技術の一つとして活用することが期待される.4.栽培終了時の土壌の化学性は,マルチ区ではpHや無機態窒素,交換性カリウムの濃度が無処理区よりも高かった.