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実驗的肝癌生成過程に於ける肝酵素に就てエステラーゼ及カテプシン
岸 三二春野 勝彦
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1951 年 42 巻 1 号 p. 69-76

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抄録

バターイエロー投與100日以上経過した白鼠の肝の病変度を肉眼的に観察して区分し,夫々について酵素作用を調べた。その区分は肉眼的正常,表面不平滑,硬変及び肝癌で,尚これに肝癌生成肝の非癌部の硬変を加えた。対照に普通食(白米)の白鼠の肝と肝癌生成阻止物質である牛肝投與白鼠の肝を採った。
酵素液(グリセリン抽出液)と基質を混じ一定時間孵卵器中に放置し,エステラーゼの場合は中和するに要する0.1NのNaOHのcc数で活性度を表し,カテプシンの場合はフォルモール滴定により,その活性度を0.1NのNaOHのcc数で示した。
エステラーゼ作用はバターイエロー投與により肉眼的変化が表われる時期に作用が下り,硬変期は同樣な値を示し,肝癌は更に顯著に低下している事が認められた。尚対照の内牛肝投與のものは普通食のものよりエステラーゼ作用の大なる事が認められるが,この事実と肝癌阻止作用との関連性は不明である。
カテプシン作用はバターイエロー投與により正常より増し肝癌生成されるに及んで顯著に活性を減ずる,その時は正常よりも更に低い,カテプシンのチステインに依る賦活作用は正常肝と肝癌に認められるが,バターイエロー投與動物の肝(肝癌を除く)の肉眼的変化のない肝や硬変の肝には明らかでない。
対照にとった正常のうち牛肝投與と普通食の白鼠肝のカテプシン作用は前者が稍大である。賦活後にもその差異は認められる。
尚正常肝の酵素液にin vitroでバターイエローを添加した実驗ではエステラーゼ及びカテプシンともに元の酵素液と作用の差異は認められなかった。

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