Print ISSN : 0016-450X
トキソホルモンと擔癌動物の胸腺退縮
福岡 文子中原 和郎
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1952 年 43 巻 1 号 p. 55-62

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抄録

担癌マウス及びラッテにおいて胸腺の顯著な退縮が見られるが,それと同程度の変化がトキソホルモン濃縮物の適量の一回注射で正常マウスに起ることを見付けた。
担癌動物の胸腺退縮は副腎の肥大を伴っている点から,stressに対する適應反應と関係をつけようとしている学者もあるが,我々の使用したマウス肉腫では,胸腺退縮の著しいにかかわらず,副腎の肥大はすこぶる微弱で問題にし難い。殊にトキソホルモン注射により胸腺は著明に退縮するのに,副腎は殆んど変らない点から見て,この兩者は密接な相関々係にあるものとは考えられない。
胸腺の退縮は一般に動物体の種々な不良な状態と関連していて,トキソホルモンによる場合も恐らく体蛋白の消耗を示すものと思われる。トキソホルモンによって起る肝細胞機能の障害が,不利な蛋白代謝を招き,終局において惡液質の状態まで進行することは推測に難くない。胸腺の退縮はその第一歩を表徴すると解釈出來る。

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