Print ISSN : 0016-450X
アゾ色素投與による白鼠肝癌生成過程における肝アスパラギナーゼについて
岸 三二春野 勝彦
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1952 年 43 巻 4 号 p. 421-429

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抄録

発癌アゾ色素バターエロー(DAB)投与の白鼠肝アスパラギナーゼ(Asp.)の活性度を初期より末期の肝癌生成迄追跡測定した,初期に強度に低下し,3∼4週で最低値に近い値を示した。しかして長期DAB投与により肝に病変が表われても同様であった。もし長期DAB投与の後,投与を中絶し普通食で飼育した白鼠肝Asp.の活性度は肝癌以外の病変肝は正常値に近い値を示した。これは病変肝のDABの影響のない真のAsp.作用と考える。実験初期よりその低下をみたのはDABが酵素毒として働いたものと考える。肝癌は中絶実験でも最紙値であるのは癌化と同時に一般に酵秦の型が変化し,その現われの一つとしてAsp.の活性度の低下となったものと思う。
牛肝末を普通食に添加飼育した場合の肝Asp.の活性度は正常値より極めて高い,DABと同時に牛肝末を与えた結果はさまざまで3∼4週後にもなお極あて高い値を示したものもあった。牛肝末の制癌物質であることの一つの生化学的説明に役立つと考える。
他のアゾ色素,o-アミノアゾトルオール,p-アミノアゾベンツオール投与実験の初期において肝Asp.活性度を低下させる作用の強さはDAB(強発癌性)に劣ることを知った。

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