Print ISSN : 0016-450X
43 巻, 4 号
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  • 岸 三二, 春野 勝彦
    1952 年 43 巻 4 号 p. 421-429
    発行日: 1952/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    発癌アゾ色素バターエロー(DAB)投与の白鼠肝アスパラギナーゼ(Asp.)の活性度を初期より末期の肝癌生成迄追跡測定した,初期に強度に低下し,3∼4週で最低値に近い値を示した。しかして長期DAB投与により肝に病変が表われても同様であった。もし長期DAB投与の後,投与を中絶し普通食で飼育した白鼠肝Asp.の活性度は肝癌以外の病変肝は正常値に近い値を示した。これは病変肝のDABの影響のない真のAsp.作用と考える。実験初期よりその低下をみたのはDABが酵素毒として働いたものと考える。肝癌は中絶実験でも最紙値であるのは癌化と同時に一般に酵秦の型が変化し,その現われの一つとしてAsp.の活性度の低下となったものと思う。
    牛肝末を普通食に添加飼育した場合の肝Asp.の活性度は正常値より極めて高い,DABと同時に牛肝末を与えた結果はさまざまで3∼4週後にもなお極あて高い値を示したものもあった。牛肝末の制癌物質であることの一つの生化学的説明に役立つと考える。
    他のアゾ色素,o-アミノアゾトルオール,p-アミノアゾベンツオール投与実験の初期において肝Asp.活性度を低下させる作用の強さはDAB(強発癌性)に劣ることを知った。
  • 森 和雄, 百木 せい子
    1952 年 43 巻 4 号 p. 431-436
    発行日: 1952/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    木下法にしたがい,Butter Yellow白米食で白鼠を飼育すること14週後,これらの動物を2群に分けた。1群はさらにButter Yellow白米食を与えつづけ,他の1群は正常食に切替え,2週乃至3週を経て実験に供した。
    実験に際し,白鼠を出血死せしめ,その肝の病変にしたがって肉眼的正常,表面不平滑,肝硬変並に肝癌の4段階に分け,その各々の肝並に腎カクラーゼ作用をBattelli-Stern装置によう測定比較検討した。
    予備実験に際し,カタラーゼ作用の至適酸度がpH8.5であることを先ず確め第1表に示した。
    次に第1群の白鼠の肝並に腎カタラーゼ作用を第2表に示した。表に明らかなように肝の病変が進行するにつれて,動物の肝カタラーゼ作用は漸減し,肝癌では0に近いかあるいは痕跡的存在を示すに過ぎなかつた。これらの成績は従来の諸研究者の報告に完全に一致している。他方腎カタラーゼ作用は肝カクラーゼの減少につれ逆に漸増している点が注目に値する。
    第2群即ちButter Yellow白米食後正常食を与えた動物の肝並に肝カタラーゼ作用は,第3表にみる如く上述の結果とは異った傾向を示した。即ち肝の病変の初期では肝カタラーゼ作用はむしろ増加している。硬変を呈する肝のカタラーゼ作用も正常肝の80%程度を示している。しかし肝癌では第1群の白鼠の場合と同様に痕跡的であった。腎カタラーゼは第1群の場合ほど顕箸ではないが病変の進行につれて多くの場合正常値よりうわまわっている。
    さて上述の諸結果は第1図に図示して参考とした。第1群並に第2群の動物の肝カタラーゼの差異は何に由来するのであろうか。著者等は必ずしも結論を急ぐものではないが,肝組織に含まれるButter Yellowの有無は大いに関係あるのではなかろうか,殊にMiller等の報告によるButter Yellow飼与動物の肝組織に存在する蛋白結合色素の意義は見のがすわけにはいかない。
  • 森 和雄, 川井 三郎, 重田 吉輝
    1952 年 43 巻 4 号 p. 437-441
    発行日: 1952/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    白鼠にButter Yellow白米食を与え14週を経て後,正常白米食に替え更に2週乃至3週飼養した。これらの動物を出血死せしめ,肝病変を肉眼的正常,表面不平滑,肝硬変乃至肝癌の4段階に分ち,その各々をデシケーター中で滅圧乾燥秤量した。乾燥材料100mg宛を採り,H2SO4酸化後,KSCNで呈色せしめ光電比色計を用いて,その全鉄量を比色定量した(Kennedy法)。
    実験結果は第1表に示し,第1図に図示した。即ち肝癌生成過程における肝鉄量の消長は乾燥,新鮮両材料共に同じような傾向を示している。即ち肉眼的正常肝の全鉄量は全例中最高値を占め,正常肝の2倍以上に達した。ついで表面不平滑肝並びに肝硬変の場合はこれより漸滅し,肝癌の際は正常肝の半滅値にすぎなかつた。
  • 森 和雄
    1952 年 43 巻 4 号 p. 443-447_1
    発行日: 1952/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    白米に5%の割合で氷醋酸を添加した飼料で,白鼠を飼養すると前胃粘膜上皮の増生及び角化,乳嘴腫様変化並びに潰瘍等が生成されることがわかった。即ち醋酸飼与30日以上を経た白鼠の前胃壁は一体に肥厚し透明度を減じ,処により著しく肥厚している。しかして灰白色あるいは白色で中心に紅褐色の斑点としてみえる陷落部を伴った乳嘴腫様突起が散在性にみられる。
    顕微鏡的には肥厚した上皮細胞の増殖による乳嘴腫様変化で最上層の角化が著しい。そしてしばしば肥厚した上皮は筋肉層内へ侵入し異所的増殖の像を示し,その部分には多くの核分裂像をみとめることが出来る。多くの場合,乳嘴腫様変化の一部は崩壊欠如し,潰瘍を形成している。
    これらの変化は実験日数30日で早くも出現し始めるが,200日程度の時日を経ても乳嘴腫様変化の増殖以外に特記すべき進行性の変化はみられなかった。
    従来多くの研究者によって種々の化学物質を用いて,動物の胃に腫瘍あるいは腫瘍様変化をもたらした業績が発表され,殊に杉浦博士はそれらを綜説的にまとめられた。一方Salmon並びにCopelandは多量のtrybutyrinを飼料に添加し,白鼠の前胃に乳嘴腫を惹起せしめた。この研究室においても彼等と全く独立した見解から酪酸飼与実験を繰返した。酪酸飼与による白鼠の前胃変化は,上記の醋酸の場合によく似ている。しかし酪酸の場合に多くみられるkeratin cystは,本実験では全く出現せずに,むしろ潰瘍の生成が普通であった。
    このような低級脂肪酸群中,酪酸並に醋酸の影響が著明である事から,更にプロピオン酸の作用が当然研究の対象となってくるが,実験は目下進行中である。
  • 武田 勝男
    1952 年 43 巻 4 号 p. 449-480
    発行日: 1952/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腫瘍における免疫及びアレルギー反応というデリケートな問題の追求に適当した吉田肉腫及び若干の純系白鼠の系統が提供されたので先ずその累代移植の成績から研究を開始した,その結果,山下系白鼠は吉田肉腫移植ですべて腫瘍死して最も吉田肉腫発生動物系に近い態度を示し,一般市販雑婚白鼠はほぼこれに類した,Wistar系は初期世代は腫瘍死し後世代ではやや増殖力を減じて常に10日前後に腫瘍細胞は突如空胞変性に陷って消失して自然治癒した。どぶ鼠では腫瘍死と自然治癒が混在し,くま鼠,廿日鼠は何れも自然治癒したが累代移殖は可能である。
    この突如として起る自然治癒は一方移植動物の系統が腫瘍発生動物から遠縁であるために増殖性が低下する事,動物の老若,血清の自然凝集素の有無,正常反応性の強弱などが関係すると共に他方この腫瘍細胞を抗原として移植動物に抗体が発生し腫瘍細胞と反応してチトトキシンアレルギー性反応が成立する事が関係する事を知った。
    即ち移植腫瘍における腫瘍死と自然治癒は腫瘍の増殖性と移植動物における抗体発生の相互関係に基くものである。生体は細菌感染時におけると同様にノルメルギー,アレルギー,アネルギーの3反応状態を示し,抗体過剰でアレルギー状態を示して自然治癒し,抗原過剰でアネルギー状態に陷つて腫瘍死する。
    腫瘍の免疫の解明には自然治癒現象が対照になるが,自然治癒例への再移植は100日以上阻止され強いアレルギー反応を伴う,その血清は試験管内で40-160×倍稀釈まで吉田肉腫を自然治癒時同様に空胞変性に陷れ増殖性を失わしめる。この血清を先に正常動物に与えればその後の移植は抑制される。
    自然治癒血清は又腫瘍細胞を80-640×迄凝集し,同時に山下系腹腔単球を凝集するがその赤血球を凝集せず有核細胞に共通する抗原性を認める。腫瘍死鼠血清はしかし凝集素を示さず又山下系等に吉田肉腫の皮下移植剔出をくりかえせば長期間の抗移植性を現すが血清の凝集反応は陰性である。
    兎,山羊を吉田肉腫で免疫すれば総ての鼠細胞及び吉田肉腫を凝集融解する強い抗鼠性(種属特異性)のチトトキシンを生ずる。これを鼠の赤血球で吸収すれば腫瘍凝集素はなお残り,自然治癒鼠血清に近づく,これを正常有核鼠組織で吸収すれば腫瘍凝集素もと0なるがなお生体内外で吉田肉腫を空胞変性させる因子が残り抗移植性を与えた山下系血清に近づく,これを生の吉田肉腫で吸収すれば全く抗肉腫性も失われる。即ち腫瘍免疫は抗鼠性の種属特異性,抗鼠有核細胞特異性の他に吉田肉腫に特に作用する独立した因子が存在する,
    事実吉田肉腫発生系統鼠の正常組織でこれと遠縁の白鼠を強く免疫すれば一過性ながら吉田肉腫移植を阻止する弱い免疫を得る,しかしこれを正常組織で吸収すれば抗吉田肉腫性は失われる。
    以上の免疫血清によつて吉田肉腫の治療を行うに,Wistar系移植では何れの免疫血清でも自然治癒は促進される。しかし山下系,市販雑婚白鼠では多くは中毒死,再発腫瘍死を来す,唯Wistar系の自然治癒血清の大量,鼠の赤血球で吸収した兎の免疫血清で完全治癒が成立する。また抗吉田肉腫兎血清を種々の操作で正常鼠組織あるいは殺した吉田肉腫で吸収し,その有核無核細胞凝集価の0になったものでは鼠を障害せず完全治療が成立し再発を見なかった。
    しかし以上の抗腫瘍因子が直ちに腫瘍特異性を意味するか,また移植腫瘍の免疫治療から直ちに発生腫瘍のそれに及び得るかは今後の問題である。ただ従来の成績に反して移植腫瘍の免疫治療の可能な事実の一つは吉田肉腫が液状の腫瘍で有効物質が個々の細胞に直接作用し得るかちである。
    我々は以上の研究を更に発展させるためにその後に発生した吉田肉腫と同型の腹水腫瘍(MTK,1-2,弘前型)及びわれわれの教室で山下系から発生した吉田肉腫から独立した別種の新腹水腫瘍(武田肉腫)について免疫の相互関係の研究を続行中である。
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