Print ISSN : 0016-450X
メチルコランスレン経口投与による白鼠腺胃腫樣過形成について
森 和雄平福 一郎村上 忠重一井 昭五
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1955 年 46 巻 1 号 p. 1-8_6

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抄録

白鼠あるいは廿日鼠の腺胃に実験的胃癌を生成しようとする試みは, 過去数十年に亘る主として米英諸研究者の不断の努力にも拘らず, いずれも不成功に終っている。これは経口的に与えられた癌原物質と腺胃上皮との接触が粘液の介在によって妨げられることと, 前胃上皮がこれらの物質に対し顕著な感受性を有する結果として腺癌に先立って扁平上皮癌が生成されるためと考えられている。
本実験においては米に炭酸ソーダ・魚粉並に肝油を添加した飼料で動物を飼い, ポリエチレングライコールを溶媒としてメチルコランスレンを水に混じて与えることによって白鼠の腺胃に種々の増殖性変化を惹起することができた。
その変化の主なるものは1) 種々の深さの糜爛, 2) 胃小窩上皮の伸長, 3) 再生した上皮で覆われた裂れ目, 4) 種々の異型細胞, 特に腺腫様過形成を示す細胞群の出現および増殖であった。これらの異型細胞のあるものは, ときとして配列が極度に乱れ, 腺腔を失って充実性となり更に基底膜の著しい乱れを伴っていた。また時には粘膜筋層を貫いて粘膜下組織に達し, 最も甚しい例では胃固有筋層を貫き漿膜に達せんとしている場合もあった。
このような異型細胞群は将来退縮してしまうのか, そのままの姿で止まるのか, あるいは所謂腺癌に先行するのか本実験の範囲では決定できなかった。

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