Print ISSN : 0016-450X
46 巻, 1 号
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  • 森 和雄, 平福 一郎, 村上 忠重, 一井 昭五
    1955 年 46 巻 1 号 p. 1-8_6
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    白鼠あるいは廿日鼠の腺胃に実験的胃癌を生成しようとする試みは, 過去数十年に亘る主として米英諸研究者の不断の努力にも拘らず, いずれも不成功に終っている。これは経口的に与えられた癌原物質と腺胃上皮との接触が粘液の介在によって妨げられることと, 前胃上皮がこれらの物質に対し顕著な感受性を有する結果として腺癌に先立って扁平上皮癌が生成されるためと考えられている。
    本実験においては米に炭酸ソーダ・魚粉並に肝油を添加した飼料で動物を飼い, ポリエチレングライコールを溶媒としてメチルコランスレンを水に混じて与えることによって白鼠の腺胃に種々の増殖性変化を惹起することができた。
    その変化の主なるものは1) 種々の深さの糜爛, 2) 胃小窩上皮の伸長, 3) 再生した上皮で覆われた裂れ目, 4) 種々の異型細胞, 特に腺腫様過形成を示す細胞群の出現および増殖であった。これらの異型細胞のあるものは, ときとして配列が極度に乱れ, 腺腔を失って充実性となり更に基底膜の著しい乱れを伴っていた。また時には粘膜筋層を貫いて粘膜下組織に達し, 最も甚しい例では胃固有筋層を貫き漿膜に達せんとしている場合もあった。
    このような異型細胞群は将来退縮してしまうのか, そのままの姿で止まるのか, あるいは所謂腺癌に先行するのか本実験の範囲では決定できなかった。
  • 村上 忠重, 中村 曉史, 鈴木 武松
    1955 年 46 巻 1 号 p. 9-14_2
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    著者等は胃癌の組織発生を研究しつつあるが, 充実癌に比し腺癌の発生型態が漠然としているのに悩んでいる。この困難をのりこえるために, 胃粘膜に発生する腸上皮化生の機転を明かにし, それとの比較から腺癌発生のそれに関し, 手懸りを得たいと望むようになった。著者等の外科で切除された胃潰瘍の中に, 潰瘍周辺に奇妙な糜爛が存在する1例があった。そこから多数の連続切片を作製した所, 多数の異型性腺腔群と腸上皮細胞群とが混然として発生しているのが見出された。腸上皮細胞群の中, 連続切片によってその独立性が立体的に証明されたものを腸上皮細胞島と呼ぶことにし, それを大きさの順に並べると, 腸上皮細胞島は主として胃小窩の最深部に当る不偏細胞帯に発生し, 周囲の細胞を置換することによって次第に増殖拡大するものであると推論することが出来た。見出された最小の腸上皮細胞島は幅50μ, (細胞数7個), 厚さ60μ, で数十個の細胞群よりなっていた。かかる大きさの島が本例に6個あった。
    腸上皮細胞性腺腔の新生という問題は否定も出来ないが, 腸上皮島の増殖には大きな役割を演じていないと考えられた。かかる型の新しい細胞群の発生形式を腸上皮型発生と呼びたい。
    腸上皮細胞の発生(化生)母細胞は一応不偏細胞と考えられたが, 一般の胃小窩上皮, 再生上皮等にこの能力があるかどうか, 等の問題は未決定である。
    また腸上皮細胞に似て非な異型性細胞群が本例には多数みられ, かつそれらが, 腸上皮島との構造の比較から腸上皮型発生型式をとることも推定された。それらの異型細胞群はそれ自身異型性が強いのみならず, それらから構造の乱れ, 染色性の変化等の強い細胞群が発生している像が見出されるので, その悪性度如何ということは極めて重要な問題であると思われるがこれについては別の機会に論ずるつもりである。
  • 田中 達也, 加納 恭子, 外村 晶, 岡田 正, 梅谷 実
    1955 年 46 巻 1 号 p. 15-26_1
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    牧野•田中 (1953) はポドフィリンがMTK-肉腫, ならびに吉田肉腫に対して顕著な制癌作用を有することを明かにした。われわれはポドフィリンより分離精製されたポドフィロトキシン, アルファ•ペルタチン, ベータ•ペルタチン, クエルセチンの4種の試薬比ついてMTK-肉腫におよぼす影響を細胞学的に観察した。腫瘍移植4~6日目のラッテの腹腔内にそれぞれの薬品の適当量を注射すると, 薬品の種類によって若干の程度の差異は認められるが, いずれの場合にも腫瘍細胞の多数に崩壊が起り, 腫瘍の増殖は一時抑制される。その細胞学的作用はポドフィリンのそれに類似したもので, 中期細胞の著しい分裂抑制がみられると同時に休止細胞に対する影響も観察された。しかしながら, 薬品の影響をうけることなく生きのびる一群の腫瘍細胞が存在していて, それらが再び増殖して腫瘍再成の源となる。実験においては, 肉腫の成長の完全な退行は一例も観察されなかったが, 僅かながら生存期間の延長をもたらした。
    すなわち, 腫瘍細胞におよぼす影響はいずれの薬品もポドフィリンにはおよばないが, 4種の中ではポドフィロトキシンが最も強烈であり, ついでベータ•ペルタチン, アルファ•ペルタチン, クエルセチンの順に作用の度合が減少した。
  • 石原 隆昭, 吉田 俊秀
    1955 年 46 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    筆者の一人, 吉田が北大牧野研究室でB系マウスの近親交配をしていたときに, その系統の一個体に腹水性腫瘍の自然発生を見た。この腫瘍を原発系統および他系統の多数の個体へ移植を試みたが, 結果はすべて陰性であった。この研究はこの腫瘍の組織細胞学的な検索の結果である。
    脾臓, 肝臓および腸間膜淋巴腺などに著しい肥大が認められ, 腹腔背壁には拇指頭大の癌状腫瘍が観察された。腹腔内には多量の出血性腹水が認められた。肝臓, 脾臓, および腎臓の組織学的観察を行ったが淋巴性細胞, 淋巴球および中性好性白血球の浸潤が見られた。特に腎臓の変化が強度で, 腎小休に淋巴性細胞の浸潤が著しい。腹腔背壁の癌状腫瘍は淋巴性細胞および淋巴球からなり, 分裂細胞が多数見られた。
    腹水を aceto-orcein で固定染色し観察したところ, 多数の腫瘍細胞が見られ, 分裂像もしばしば観察された。分裂細胞の染色体の形態を観察したが, 凝集型, その他の異常分裂型が多く, 正常に分裂している所の, いわゆる分裂型細胞は一個体も見られなかった。
    以上の観察結果から, この腫瘍は恐らく淋巴性白血病であろうと考えられる。この腫瘍が他の個体に移植されなかった理由としては色々と考えられるが, 正常に分裂増殖するところの, 分裂型細胞の欠除がその一因ではなかろうかと考えられた。
  • 岸 三二, 浅野 文一, 春野 勝彦
    1955 年 46 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    発癌過程における臓器の病変とその酵素活性度との相関関係の研究である, われわれはさきに発癌剤投与ネズミ肝の酵素アミダーゼに属するハロゲン化脂肪酸アミド脱アミノ酵素の活性度について報告した。ここに基質として単なる脂肪酸アミドの同族列15種類を選んだ。うち2種はω-phenyl 脂肪酸アミドである。
    発癌剤を長期間投与した後ネズミを正常食にもどして飼育をつづけた動物の肝を材料とした。肝の均質液と緩衝液と基質の水溶液-水に難溶性の物質は propylene glycol を溶媒に用いた-を混合し一定時間内に脱アミノ化されて遊離したアンモニアを Folin 法で定量し酵素の活性度とした。これはすべて白紙試験値を差引いてある。
    対照とした正常動物肝の活性度は高い, 病変肝 (肝癌を除く) は病変の亢進に伴って漸時低下するがなおかなり高い活性度をもつ. 肝癌そのものは活性度は極はめて低くく正常値の10分の1の程度である。この結果は既報ハロゲン化脂肪酸アミドの脱アミノ酵素と近似している。なお基質脂肪酸アミドの分子量, 分子構造と酵素的分解性にも論及した。
  • 浅野 文一
    1955 年 46 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    発癌剤を長期間投与し投与を中絶してから正常食に戻してなお長期間飼育をつづけたダイコクネズミの肝を材料とした。また一方投与実験初期でしかも投与継続中のダイコクネズミ肝を材料とした。
    肝性組織均質液, コリン塩酸塩水溶液(基質), 燐酸緩衝液(pH 7.5)の混合液を38°Cにをいて検圧計で測定しOO2でコリンオキシダーゼ活性度を表示した。
    病変肝で発癌にいたらないものは活性度は正常値とさして遜色ない程度である, そして硬変肝ではやや低下の傾向がある。肝癌自体の活性度は顕著に減少している。なお発癌剤投与開始3-4週でしかも投与継続中のネズミ肝-肉眼的には病変は認められない-では著明に低下している。これらの結果から Woodward (1951) の報告を考えてみると彼の使用した動物の肝は常に発癌剤の作用下にあったことを思わせる。発癌剤自体の投与中絶えず実験動物の肝に惹起しつつあると考えられる毒作用と, その結果として現われた肝の病変とを区別して考えるべきである。
  • 一井 昭五
    1955 年 46 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    2-Acetylaminofluorene を白鼠(ウィスター系)に与えて, 肝癌を生成する過程における肝の p-Aminohippuric acid 合成酵素の活性度をしらべた。
    実験結果を総括的にいえば酵素活性度は肝の病変に応じて極めて鋭敏な態度を示した。すなわち肝の病変の進行につれて階段的に減少し肝癌組織では全くみられなかった。
    この酵素はいわゆるペプチッド結合(CO-NH)を合成するのであるが肝の癌性化につれてその活性度が減弱して行くことは興味あることと思われる。
  • トキソホルモンと Kochsaft 因子
    遠藤 英也, 杉村 隆, 小野 哲生, 紺野 邦夫
    1955 年 46 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    中原, 福岡により悪性腫瘍から分離されたトキソホルモンは, 福岡, 中原の肝粉食または鉄投与により, その作用が打消されるという実験結果から, カタラーゼの合成阻害を起すものと推定され, 一般にトキソホルモンにより含鉄酵素, ヘモグロビンの合成阻害が起り, それが癌悪液質の原因になると考えられる。これに対して, Hargreaves and Deutsch は悪性腫瘍の Kochsaft が in vitro で結晶カタラーぜを直接阻害すると報告した。トキソホルモンと Kochsaft 因子との相関関係を明らかにすることは重要だが, 今回, 我々の実験結果から, Kochsaft 因子は正常組織にも悪性腫瘍と同程度に存在し, その一部はグルタチオンによるものであり, 腫瘍特異的でなく, さらにトキソホルモンは in vitro で結晶カタラーゼを阻害せず, 両者は全く異ったものであることが確認された。これは Price and Greenfield が担癌動物の肝臓から分離したカタラーゼ量が実際少いという実験結果と共に合成阻害説を支持するものである。
  • 酒井 純雄, 蓑田 健二, 斎藤 伍作, 福岡 文子
    1955 年 46 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    我々は著者の一人福岡による簡単, かつ実用性のある制癌性化合物を選択する方法を用いてキノン類の制癌作用を選別した。試験に供した化合物は主として 1,4-naphthoquinone の誘導体であるが, その内数種を除いては制癌作用に関する文献に記載されていないものである。この方法で有効であった化合物に就いては広く用いられている Ehrlich 腹水癌に対するin vivo の制癌作用をも検査した。
    その結果, われわれは 1,4-naphthoquinone の alkylthio 誘導体が制癌性を有することを見出すことができた。すなわち, 2-methylthio-1,4-naphthoquinone, 2,3-dimethylthio-1,4-naphthoquinone, 2-thioacetylenglycol-1,4-naphthoquinone, および 2-ethylthio-1,4-naphthoquinone 等の thioquinone である。
  • 小野 哲生
    1955 年 46 巻 1 号 p. 67-79
    発行日: 1955/03/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    SH酵素が水溶液中で放射線照射により非活化をうけることは Barron 等によって認みられているが, これが果して放射線障害の機序となりえるか否かにはまだ疑問がある.
    本実験ではまず, 鼠肝よりのミトコンドリヤにX線を照射しSH基の減少と酵素活性の低を追求した. 3000rの照射で酸素の溶在するときにのみ軽度のSH基の減少とそれに匹敵するコハク酸酸化酵素能の低下を認めた. また同酵素能はGSHの添加により再賦活された.
    さらに高度の阻害は酸化に共軛する燐酸エステル化能にあらわれ, P/O比はコハク酸を基質とした場合0.81から0.29に減じ, GSHによりほぼ非照射対照値に恢復した.
    次に豚および小牛の胸腺から Chromosome を分離しX線を照射したところ, そのSH基はミトコンドリヤ中のものより敏感で豚胸腺よりの標本は減少度40%にもおよんだ.
    さらに鼠の全身照射(600r)による脾臓SH基, RNA, DNA量の低下および体重の減少がチオ硫酸ソーダによってSH化合物システインと同様にかなり予防されることが示された.
    以上の知見は放射線障害の一機序としてSH基侵襲を考える根拠となり, またSH化合物による障害予防のうらづけをなすと考えられる.
  • 1955 年 46 巻 1 号 p. e1
    発行日: 1955年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
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