Print ISSN : 0016-450X
放射線障害並びにその予防におけるSH基の役割について
小野 哲生
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1955 年 46 巻 1 号 p. 67-79

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抄録

SH酵素が水溶液中で放射線照射により非活化をうけることは Barron 等によって認みられているが, これが果して放射線障害の機序となりえるか否かにはまだ疑問がある.
本実験ではまず, 鼠肝よりのミトコンドリヤにX線を照射しSH基の減少と酵素活性の低を追求した. 3000rの照射で酸素の溶在するときにのみ軽度のSH基の減少とそれに匹敵するコハク酸酸化酵素能の低下を認めた. また同酵素能はGSHの添加により再賦活された.
さらに高度の阻害は酸化に共軛する燐酸エステル化能にあらわれ, P/O比はコハク酸を基質とした場合0.81から0.29に減じ, GSHによりほぼ非照射対照値に恢復した.
次に豚および小牛の胸腺から Chromosome を分離しX線を照射したところ, そのSH基はミトコンドリヤ中のものより敏感で豚胸腺よりの標本は減少度40%にもおよんだ.
さらに鼠の全身照射(600r)による脾臓SH基, RNA, DNA量の低下および体重の減少がチオ硫酸ソーダによってSH化合物システインと同様にかなり予防されることが示された.
以上の知見は放射線障害の一機序としてSH基侵襲を考える根拠となり, またSH化合物による障害予防のうらづけをなすと考えられる.

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