Print ISSN : 0016-450X
アミノアゾ色素による発癌の機構に関する研究
第一報 ヂメチルアミノアゾベンゼンの代謝と発癌性の関係について
寺山 宏
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1958 年 49 巻 3 号 p. 223-232

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抄録

1) ヂメチルアミノアゾベンゼン (DAB) の肝ホモヂェネートによる代謝産物をクロマト的に分離定量する方法を研究した。これによって反応液中よりDAB, MAB, ABのみならず少くとも3種の水酸化アミノアゾベンゼン誘導体が分離された。
2) モルモット, ラッテ, およびマウスの肝臓において, DABの全体的な代謝能力を比較したところ, ラッテ肝が圧倒的に強い活性を示すことが分った。
3) ラッテの肝臓, 腎臓, 睾丸, および脾臓について, DABに対する代謝能力を比較したところ, 肝臓が最も強力で腎臓脾臓は極めて弱く, 睾丸はほとんど不活性であった。
4) DAB, MABまたはABを予めゾンデでラッテの胃に一定量(20~50mg)投与すると, DABの場合には極めて顕著なDAB代謝能力の低下が, 色素投与後3日目の肝臓について観測された。興味あることは発癌力のないABについてはこのような活性の低下は全く認められないことである。マウスにDABを投与した際の影響は, ラッテについてみられたような顕著なものは認められないようである。
5) 以上のような実験的事実は, DABの発癌にその代謝が重要な条件となっていることを意味するものであって, DABが肝臓内で代謝される段階において, 発癌に関係する機構が結びついていることを示すといえよう。DABの脱メチル化がこの際特に問題になるのはABのようなものでは影響が全く現れないことからも考えられることである。in vivo においてアミノアゾ色素と結合する相手の蛋白質が何であるかわなお不明であるが, われわれはこれに対して, DABの代謝に何等か関係をもっている酵素であろうと想像しているのであって, 現在のところこれに矛盾するような事実には遭遇していない。

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