Print ISSN : 0016-450X
49 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 遠藤 英也
    1958 年 49 巻 3 号 p. 157-166
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    植物細胞に対する分裂促進素 Kinetin を基礎としてそのフルフリール基を他の種々のグループで置換して数種の新誘導体を合成しより強力な分裂促進能または反対に分裂阻止効果を期待した。その一つ6-(β-Indolyläthyl) aminopurin は組織培養上で正常細胞として用いた鶏胚心の繊維芽細胞および癌細胞として用いた HeLa 細胞に対し10γ/ml以上の濃度で細胞分裂を抑制し同時に多数の2核および多核細胞の出現を見た。また該物質は分裂期の metaphase に作用しこの物質に特異的ともいうべき“métaphase à trois groupes”を, 形成し, その他種々の病的分裂像が観察された。
  • 遠藤 英也, 新田 和男
    1958 年 49 巻 3 号 p. 167-170_2
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    ヌクレオチドプールから核酸が合成されて行く main path のわき道としてヌクレオチドからキネチンえの系路を想定しその想定中間体のモデルとしてテトラヒドロキネチンを合成した興味深いことにはキネチン自体は動物細胞に対し組織培養上何等の作用をも示さないのに対しこのものは HeLa 細胞に対し著しい増殖抑制作用を示した。
  • 星島 秀行
    1958 年 49 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    小野等の醋酸メタノール抽出法により調製された Toxohormone を廿日鼠に注射し, 肝臓の鉄代謝に関係ある事が知られている物質 (Vit. C, Vit. B2, Catalase) を測定したところ, Vit. C は Toxohormone 注射により Catalase の減少と比例して減少する事がわかった。然し, Vit. B2の増減は見られなかった。
    中原, 福岡の原法 (水抽出アルコール沈澱) により調製された Toxohormone を用い, 同様な実験を行ったところ, 肝臓の Ferritin 鉄は減少する事がわかったが Vit. C, Vit. B2は対照との間に差が認められなかった. 然も Ferritin 鉄の減少は Catalase の減少と比例しなかった。
  • 川上 泉
    1958 年 49 巻 3 号 p. 177-192
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    シロネズミの正常肝組織をイモリの嚢胚の予定外胚葉に作用させると原脳的構造を誘導する。この実験では, 同種の腹水肝癌結節 (AH 7974, AH 130) を誘導原に用い, 癌性化することにより誘導効果が如何に変化するかを見た。1) 正常肝組織は原脳的誘導を含む70%の神経性の誘導を起した。両肝癌結節では誘導率は極めて低い。(3~39%) 両種肝癌に差異は認められなかった。2) 予備的実験で, 0.14M NaClで結節から抽出した粗核蛋白質に強い誘導能が見られたところから, 肝癌細胞は誘導能を内包するが, 細胞膜にその誘導作用を防げる如き病理変化があるように思われる。3) これらの肝癌結節で, しばしば, 背索の誘導が見られた。正常肝細胞の原脳誘導性が癌性化により中胚葉誘導の効果を帯びるようになると考えられる。
  • 伊東 信行
    1958 年 49 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    p-dimethylaminoazobenzene (DAB) の発癌過程における星細胞の態度を追求するために, 肝超生切片によるDAB分解に対する星細胞封鎖の影響を検索した。
    すなわち, 体重100~200gのラツテの腹腔内に, 生理的食塩水による3%墨汁, 1%トリパン青, 1%コンゴー赤の注射群および3%墨汁と0.08%カルミンとの重複注射群の4群を作り各々10cc/kg体重で使用, 一定時間後 (3~48時間) に屠殺, 200mgの肝超生切片を作り, 20ccのDAB飽和の Krebs-Ringer 氏液に浮遊させ, O2-Gasの存在のもとで37.5°Cの恒温槽内で30分間振盪後, 直ちに100°C加熱, 酵素活性の停止をなし, 25%塩酸アルコール2ccを添加, 発色により濃度を測定した。同時に, 肝組織を Formalin, Susa 固定などを行い星細胞封鎖の程度を組織学的に検索し, DAB分解能との関係を比較追求した。
    その結果, 各封鎖物質の種類によりDABの分解能に異った影響をおよぼす。その影響は何れも注射後18時間以内に著明である。星細胞封鎖によるDAB分解能への影響は時間の経過と共に動揺を示し, 漸次正常に複する傾向を示す。
    組織学的には墨汁の場合, 星細胞封鎖の程度の強い時, DAB分解能の抑制も強い傾向を示すが, カルミンとの重複注射群では逆の傾向がみられる。すなわち, 何れの場合も肝超生切片によるDAB分解に対する星細胞封鎖の効果は, 封鎖物質の種類と時間の経過により変動し, 一様ではないが, 全般には抑制的である事を明かにした。
  • 関口 豊三, 亘理 勉, 江藤 秀雄, 吉川 春寿
    1958 年 49 巻 3 号 p. 199-208
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    移植性腫瘍および垣癌動物の肝, 脾におけるDNA代謝を放射性燐P32を用いて検索し, これにおよぼす放射線の著明な抑制低下を認める一方これらの組織におけるDNA解合酵素活性を測定し, DNA代謝の rate とこの DNase 活性の強さとがよし一致していること, またこの酵素活性はレ線照射に依って著明に増強することを認めた。DNA代謝はP32を1μc/gmの量で腹腔内注射し, その後2, 4, 6, 12, 24および48時間後に組織のDNAを Mirsky-Pollister 法で抽出精製した後, その比放射能cpm/DNAprを測定し, 腫瘍, 脾が高く, 肝が低い値を示した。
    レ線照射 (全身照射) 300r 24時間後にこれ等の値は著しく低下し, 脾は1/10に, 肝および腫瘍は各々1/3に低下した。DNA解合酵素活性は何れの組織はおいても DNase II と呼ばれる所謂酸性 DNase 活性のみが認められ, 腫瘍, 脾に強く, 各々50, および45酵素単位を示すか, 肝は低く15単位であった。一方上記照射後, 24時間後に酵素活性は増強し, 脾に著しく, 約2倍となった。この活性増強の機序について, 酵素蛋白の合成の増加があるか否かについて, in vitro での slice の incubation を行ったが, 酵素蛋白の合成の増加は認められなかった。
  • 臼淵 勇, 大星 章一, 土田 亮一, 田辺 秀治
    1958 年 49 巻 3 号 p. 209-222
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    Mitomycin Cをラッテ, マウスの各種の腫瘍に使用し, 次の如き成績を得た。
    A) 腹水腫瘍に対する効果: 各種の腹水腫瘍を腹腔内移植48時間後で純培養に増殖した状態のときに50~1000mcg/kgの mitomycin Cを毎日腹腔内に注射し, その期間は実験例によってかなりの差異はあるが (3~33日), 一般に大量投与の場合ほ短期間, 小量投与の場合は長期間におよんだ。実験例は全例生存例百分率曲線によって検討し, その50%生存日数が非治療群の50%生存日数に比して少くとも2倍以上に達したときに延命効果のあるものと判定した。
    この結果をまとめてみると, 最も著しい効果の認められたものは2倍体弘前肉腫であって, 50mcg/kgの連日投与で延命効果が認められた。次で4倍体弘前肉腫, 肝癌130系は100mcg/kgで延命効果が認められ, マウス Ehrlich 癌は200mcg/kgで効果が認められた。マウス淋巴性白血病は吉田肉腫とともにかなりの抵抗を示し, 500mcg/kgではじめて延命効果がえられた。臼淵肉腫は最初の実験では500mcg/kgで延命効果がみられたが, その後の増殖力の高い時期には強い抵抗を示し, さらに武田肉腫および肝癌7974系は1000mcg/kgでも全く効果は認められなかった。この成績は mitomycin Cがラッテ•マウスの広範囲の腫瘍に対して強い効果を有することを示すものである。
    また, 細胞学的には同一系の腫瘍である吉田肉腫と弘前肉腫の間および肝癌130系と7974系との間に mitomycin Cの効果の著しい差違のみられたことは興味深いことである。
    B) 皮下腫瘍に対する効果
    2倍体弘前肉腫および4倍体弘前肉腫をラッテ皮下に移植し, 3~10日後で皮下腫瘍の明らかな発育を認めてから, 腹腔内に mitomycin C 200~500mcg/kgを連日投与し, 7~15日におよんだ。3日後に治療開始したものはほとんど全例が治癒し, 5~6~10日後に治療開始したものも, 治療期間中に腫瘍は縮少し, 治癒するものが多く, 一部は治療中止後に再発した。対照非治療群は全例腫瘍死した。この成績は mitomycin Cが結節性腫瘍に対しても著明な抑制効果を有することを示すものである。
  • 第一報 ヂメチルアミノアゾベンゼンの代謝と発癌性の関係について
    寺山 宏
    1958 年 49 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 1958/09/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    1) ヂメチルアミノアゾベンゼン (DAB) の肝ホモヂェネートによる代謝産物をクロマト的に分離定量する方法を研究した。これによって反応液中よりDAB, MAB, ABのみならず少くとも3種の水酸化アミノアゾベンゼン誘導体が分離された。
    2) モルモット, ラッテ, およびマウスの肝臓において, DABの全体的な代謝能力を比較したところ, ラッテ肝が圧倒的に強い活性を示すことが分った。
    3) ラッテの肝臓, 腎臓, 睾丸, および脾臓について, DABに対する代謝能力を比較したところ, 肝臓が最も強力で腎臓脾臓は極めて弱く, 睾丸はほとんど不活性であった。
    4) DAB, MABまたはABを予めゾンデでラッテの胃に一定量(20~50mg)投与すると, DABの場合には極めて顕著なDAB代謝能力の低下が, 色素投与後3日目の肝臓について観測された。興味あることは発癌力のないABについてはこのような活性の低下は全く認められないことである。マウスにDABを投与した際の影響は, ラッテについてみられたような顕著なものは認められないようである。
    5) 以上のような実験的事実は, DABの発癌にその代謝が重要な条件となっていることを意味するものであって, DABが肝臓内で代謝される段階において, 発癌に関係する機構が結びついていることを示すといえよう。DABの脱メチル化がこの際特に問題になるのはABのようなものでは影響が全く現れないことからも考えられることである。in vivo においてアミノアゾ色素と結合する相手の蛋白質が何であるかわなお不明であるが, われわれはこれに対して, DABの代謝に何等か関係をもっている酵素であろうと想像しているのであって, 現在のところこれに矛盾するような事実には遭遇していない。
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