2022 年 23 巻 2 号 p. 101-109
本研究では,大学生の持つイラショナルキャリアビリーフに関連する要因について明らかにすることを通じ,キャリアに関するイラショナルビリーフに着目したクライエントの行動の理解や,カウンセリングにおける仮説設定を行うための基礎的資料を整備することを目的とした。日本国内の大学生231人を調査対象者とし,性別,Big Fiveの5因子,大学生活充実度,職業キャリアレディネスを独立変数,イラショナルキャリアビリーフを従属変数とした階層的重回帰分析を実施した。その結果,男性の方が非現実的な楽観,女性の方が自己に対する無力感のビリーフを持つ傾向が示され,Big Five5因子のうち,神経症傾向が強いと,非現実的な楽観ビリーフを持ちにくく,自己に対する無力感のビリーフを持つ傾向があることが明らかとなった。また,大学生活に対する充実度が,非現実的な楽観に対して有意な正の関連,自己に対する無力感に対して有意な負の関連を持ち,職業キャリア自律性が自己に対する無力感と負の有意な関連を持つことが示された。一方で,性別や性格特性といった個人属性とイラショナルキャリアビリーフの有意な関連が,大学生活充実度やキャリアレディネスを投入することで消失した。これらの結果を基に,ビリーフに着目したアセスメントやキャリア支援に関する継続研究が求められる。