本研究では,新タイプ抑うつの素因とされる対人過敏傾向(IS)・自己優先志向(PS)のうち PSを取り上げ, PSが高い社員は, 1)相互作用のない勤務状況(無相互作用在宅勤務)を出社勤務よりも快適だと感じる,(2)出社勤務から在宅勤務への変化をより肯定的に認識する,という仮説を検証した。参加者は,コロナ禍以前(2020年1月)には在宅勤務をしておらず,調査時点(2020年10月)で週1-4日在宅勤務をしている, 20-49歳の独身・独居の会社員146名であった。欠損データを除き,無相互作用在宅勤務の快適度から出社勤務の快適度を引いた差得点を目的変数として階層的重回帰分析を行ったところ(N=133),年齢,性別, IS得点を統制した後でも PS得点が高いほど,差得点が大きいことが見いだされた。次に,出社勤務から在宅勤務への変化の認識得点を目的変数として階層的重回帰分析を行い(N=105),同様の結果を得た。これらのことから仮説は支持された。