キャリア・カウンセリング研究
Online ISSN : 2436-4088
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女性労組役員における受任に至る決断と役員経験を通した意識や行動の変容プロセス
原 恵子清水 康子依藤 聡正道寺 博之岡田 昌毅
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2023 年 24 巻 2 号 p. 13-23

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抄録

企業内労働組合の女性役員を対象に,受任に至る決断と役員経験を通した意識や行動の変容について検討することを目的とした。 13名を対象とした半構造化面接(14問)を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)によって分析した結果, 40概念, 15サブカテゴリー, 4カテゴリーが抽出された。女性労組役員における受任に至る決断と役員経験を通した意識や行動の変容は,【受任に対する逡巡と決断】があり,受任後は【労組役員としての意識や行動】と【少数派や女性役員ならではの経験や思い】が相互に関係し,【労組特有の環境や支え】が存在するプロセスであった。女性労組役員は逡巡ののちに,長期的な視点のもと能動的な姿勢で決断されることや,非専従時と専従時の決断の重みは異なる等が示された。責任者や同性役員からの声がけや丁寧な説明は決断に至る重要な要因であること,少数派として多 数派の考え方や慣習に苦労し,女性活躍推進や多様性の発揮を推進することを期待されるなど,特徴的な側面も抽出された。また,組合業務は時間調整がしづらく女性活躍推進の遅れなどの組織風土が残るが,執行部仲間や社内外の人脈は人的サポートとなり,仕事と生活の両立への方策を講じることは意識や行動の変容全般への促進要因になるなど,労組特有の環境や支えに関しても整理された。

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© 2023 日本キャリア・カウンセリング学会
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