白内障手術後嚢内に残存した粘弾性物質が,前嚢収縮,後発白内障の発生に関与するか実験的に検討した.日本白色家兎を5羽用意し,全身麻酔後白内障手術を施行した.片眼は粘弾性物質を使用して嚢内に眼内レンズ(IOL)を挿入後,I/Aを使用して粘弾性物質を完全に吸引除去し,僚眼はIOLを嚢内に挿入後,嚢内の粘弾性物質は残存させて前房中の粘弾性物質のみ吸引除去し,嚢内粘弾性物質残存群とした.前嚢収縮を比較するために,術後1週間,3週間に前眼部徹照像を撮影し,後発白内障は術後3週で眼球を摘出し組織学的に解析した.結果,粘弾性物質残存群では前嚢収縮と後発白内障が統計学的有意に進行した.前嚢収縮と後発白内障の抑制に術中粘弾性物質を十分に除去し,術後早期より水晶体嚢とIOLの接着を進めることが重要である.