抄録
虚血再灌流時に人工酸素運搬体liposome-encapsulated hemoglobin(LEH)を再開通動脈から灌流させることによる脳保護効果について報告する.ラットの一過性中大脳動脈閉塞再灌流モデルを用い,再開通した内頸動脈からLEH の灌流を15 分間行い,その脳保護効果について検討した.LEH の投与により,再灌流24 時間後の神経機能の改善,脳梗塞および浮腫面積の減少を認めた.LEH はラット赤血球よりも末梢微小血管まで灌流していた.LEH は,粒径が小さいことで狭小化した微小血管まで効果的に酸素を運搬し,微小血管内皮細胞の障害を抑制し,脳内への好中球の浸潤ならびに産生されるmatrix metalloprotease-9 の産生を抑えることで脳血液関門の破綻を抑制し,脳保護効果を示すことが考えられた.再開通動脈からのLEH の経動脈的投与は,臨床においても虚血再灌流障害を軽減化する可能性がある.