脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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シンポジウム8 生活習慣病と脳卒中・認知症
糖尿病による血管病変と認知機能障害
伊藤 義彰
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2015 年 26 巻 2 号 p. 129-134

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抄録

要旨 糖尿病は脳梗塞のリスク因子であり,脳血管性認知機能障害をきたすリスクを2.0~4.2 倍にするが,アルツハイマー病の独立したリスク因子とも報告される(1.1~2.4 倍).病理的には,動脈硬化病変,虚血性脳病変,微小出血に加えてアルツハイマー型のアミロイド・プラークが増加するとの報告がある.発症機序としては,単純な動脈硬化性病変による脳虚血のほかに,アミロイドが穿通枝の脳小動脈に沈着し抵抗血管の障害,さらに静水圧の増加から末梢の血液脳関門が破綻し白質病変をきたす機序,血管病変のためにアミロイドのクリアランスが低下し実質でのアミロイドオリゴマーがニューロンを傷害する機序,Advanced Glycation Endproducts(AGE’s)や酸化ストレスによる糖毒性,さらに高インスリン血症による神経障害作用などが提唱されている.今後,これらの機序を標的とした特異的な治療法の開発が待たれる.

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© 2015 日本脳循環代謝学会
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