抄録
要旨 近年,頭蓋内圧と血圧変動の相関係数を指標とした重症脳損傷の急性期モニタリングが注目されている.脳血管自動調節能の作用が血圧変動に対するvasomotor reaction を介して脳血管床に変動をもたらし,脳血管床の変動が頭蓋内圧に反映されるため,頭蓋内圧と血圧の変動は連動し,この2 変量の相関係数から脳血管自動調節能の保全状態を評価することが可能である.我々は重症くも膜下出血,重症頭部外傷の自験例において本モニタリング法を導入し,その有用性を検証した.重症くも膜下出血術後に脳血管攣縮を発生した症例において相関係数は上昇し,遅発性脳梗塞を併発した重症例ではその上昇が有意であった.また,重症頭部外傷では急性期に解析した相関係数の平均値と3 カ月後の転帰が有意に相関した.今回の我々の研究結果について文献的考察を加えて報告する.