脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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日本の脳動脈瘤の特徴と脳動脈瘤クリッピング術における脳虚血対策
井川 房夫
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2016 年 27 巻 2 号 p. 299-302

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抄録

未破裂脳動脈瘤の保有率は人種差,地域差はなく3~5%とされるが,くも膜下出血の破裂率は日本が世界で最も高い国の一つで,未破裂脳動脈瘤の破裂率が欧米に比較して約3 倍高いためとされる.未破裂脳動脈瘤の破裂危険因子として高血圧,年齢が70 歳以上,動脈瘤のサイズ,部位があげられる.治療は日本ではクリッピングの方が多く,成績もコイル塞栓術に比較して劣らない.脳動脈瘤クリッピング術では親血管一時血行遮断が必要となることがあり,我々は脳虚血対策が重要と考え,術中血圧は収縮期で100 mmHg 以上を保ち,脳保護薬の投与,超軽微低体温麻酔下で手術を行っている.未破裂脳動脈瘤の治療成績は術後永続的神経脱落症状が3.3%で,modified Rankin Scale 低下に関与するものが2.2%であった.脳動脈瘤クリッピング術中一時血行遮断時MEP モニタリングでは,一時血行遮断が原因のMEP 変化を10.3%に認めたが,全例回復した.MEP 陽性のリスクファクターについて多変量解析で解析すると,体温が37 度以上が有意な因子であり,術中は体温の上昇を避けるべきと考えられた.

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© 2016 日本脳循環代謝学会
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