脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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頸動脈内膜剝離術による認知機能変化:123I-iomazenil SPECT による検討
千田 光平
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2016 年 27 巻 2 号 p. 303-306

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抄録

頸動脈内膜剝離術により認知機能が改善することが報告されている一方で,術後過灌流を併発した場合,無症候性であっても認知機能障害を来すとされている.しかし,いずれにおいても詳細なメカニズムは明らかではなかった.元来てんかんの焦点を検出するために用いられてきた123I-iomazeni(l IMZ)を用いたsingle photon emission computed tomography(SPECT)は,大脳皮質のgamma-amino butyric acid(GABA)レセプターの機能であるbenzodiazepine receptor binding potential (BRBP)を評価することが可能である.さらにBRBP は,脳の活動に応じて可逆的に変化するとの報告もある.我々は,IMZ-SPECT を用いて,頸動脈内膜剝離術後に生じる認知機能変化のメカニズムを解明する研究を行った.術後過灌流を併発した症例においては,有意にBRBP の低下面積が広く,またBRBP の低下面積が広い症例では,術後認知機能障害を来した.また,術後に認知機能が改善した症例のうち,大半においてBRBP の改善を認め,脳血流の改善に比して,BRBP の改善が認知機能の改善と有意に相関した.以上より頸動脈内膜剝離術後過灌流が大脳皮質神経細胞の神経受容体の機能を低下させ,認知機能悪化を来し,術後の認知機能改善には,脳循環の改善に加え,大脳皮質神経細胞の機能改善というメカニズムが存在することが示された.

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© 2016 日本脳循環代謝学会
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