2018 年 30 巻 1 号 p. 11-15
我々は,tPA 療法後の脳出血合併症を防止する治療の開発を目指している.この新規治療の開発は,予後の改善と,tPA 療法の治療可能時間域の延長をもたらす可能性がある.この目的のため,まず血管リモデリングに関与する血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)を標的とした血管保護療法を検討し,ラット脳塞栓モデルにて,VEGF 抑制薬が脳出血合併症を防止することを明らかにした.これに引き続いて,日米の知的財産権の取得,米国における創薬ベンチャーの設立,ヒト試料を用いた臨床研究を行った.現在,製薬企業との共同研究を模索している.さらに我々は,血管保護作用に加え,神経細胞保護作用,抗炎症作用を併せもつ脳保護薬候補として,成長因子プログラニュリンが有望であることを見出し,臨床応用を目指している. 本稿では,tPA 療法と血管保護薬,脳保護薬の併用療法の実現を目指したトランスレーショナルリサーチを紹介したい.