2018 年 30 巻 1 号 p. 59-64
血栓回収療法の登場により脳梗塞治療はいま大きく変化している.脳梗塞に対する血管内治療を普及させるためのプロジェクト(RESCUE-Japan Project)による全国調査では,2016 年に7702 例(6.06 件/10 万人/年)の血栓回収療法が行われたが,これは全脳梗塞の約6%と試算される.我が国での血栓回収療法の普及は急務であり,治療体制の整備が求められている.一方で,血栓回収療法が適応となっても半数の患者は機能的自立が得られない.後遺症が残存した場合の治療として,我々は内因性の神経幹細胞である傷害誘導性多能性幹細胞(ischemia-induced multipotent stem cells: iSCs)を用いた神経再生療法に期待している.iSCs は脳梗塞巣内に存在し,良好な自己増殖能を持つ.その起源はペリサイトと考えられ,神経堤の性格をも併せ持ち,神経へ分化可能である.iSCs は生体の持つ神経修復機構に関与していると考えられ,近い将来の臨床応用が期待される.