抄録
急展の著しいゲノム科学とゲノム技術の次なる最重要課題のひとつは、(日本ではテーラーメード医療とも言われる)パーソナライズド・メディシンである。パーソナライズド・メディシンとは、正しく選択された薬を正しく選択された患者に適切な量を投与する実践行為である。SNPsを見つけるプロジェクトは多数あり、それらがパーソナライズド・メディシンの基礎であるように言われている。しかし、 SNPsデータだけでは十分ではない。パーソナライズド・メディシンを実現するためには、よくトレーニングされたメディカル・スタッフの存在が前提であり、彼らが必要とする知識やデータに臨床の現場から容易にアクセスできる環境が整備されていなければならない。われわれはこのような知識基盤が如何なるものであり、それを活用するためにどのような計算ツールが必要かを考察した。それらは医薬品の一般名、構造式、3次元構造、薬物代謝酵素、標的分子、標的結合後の分子信号の流れなどに関するデータベースや知識ベース、ファーマコキネティクスのシミュレータ、分子計算パッケージなどである。われわれはその一部を開発しているが、全体の開発はCBI学会を母体としたコンソシアムなどでチャレンジすべき課題である。