Chem-Bio Informatics Journal
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MDシミュレーションによるRas蛋白質におけるMg2+の役割に関する研究
森 健一畑 晶之根矢 三郎星野 忠次
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2002 年 2 巻 4 号 p. 147-155

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抄録

Ras蛋白質は低分子量G蛋白質の一種であり、不活性なGDP結合型と活性なGTP結合型をサイクルする分子スイッチとして細胞内で働き、その活性にMg2+イオンを必要とする。他の低分子量G蛋白質において、Mg2+の解離がGDP/GTP 交換反応を促進するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)との結合に重要であることが分かり、Mg2+の配位していない低分子量G蛋白質の構造に関する情報が、その活性化メカニズムの解明に必要になってきている。今回、我々は、GDP の結合しているRas 蛋白質を用いて、Mg2+の配位している構造と配位していない構造を構築し、分子動力学シミュレーションを用いて、それらの挙動を解析した。その結果、Mg2+の配位していない構造では、スイッチ1、スイッチ2と呼ばれる領域の揺らぎが激しく、GDP 結合領域とスイッチ領域の間に、大きな溝が生じることが分かった。また、Mg2+の配位していない構造は、Ras のGEFであるSOSと結合した状態のRas に非常に似ていることが分かった。これらの結果から、Mg2+がRas とSOS の結合を制御していることが明らかになり、また、GDP の解離が段階的反応であることが示唆される。今回の結果は、細胞内Mg2+ 濃度が細胞内情報伝達を制御している可能性があることを示唆している。

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2002 Chem-Bio Informatics Society
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