Chem-Bio Informatics Journal
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2 巻, 4 号
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Review
Original
  • 大福 裕子, 田中 秀夫, 上林 正巳
    原稿種別:  
    専門分野: 分子計算
    2002 年 2 巻 4 号 p. 119-136
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/12/31
    ジャーナル フリー
    進化の過程で生じた機能性タンパク質の立体構造はそれまでに存在していた各立体構造部品が集められ、新しい機能を創り出したという仮説をたてた。その仮説を立証するために、X線結晶構造解析により立体構造が決定され、その立体構造がマルチドメインで構成される大腸菌の6遺伝子、Flavodoxin reductase, Flavin oxidoreductase, Integrase/recombinase xerD, Endonuclease ?, Heat shock protein (grpE), Elongation Factor Tu (tufB)を選んだ。それらのDNA 配列を対象に、マルコフモデルを用いて得られた確率を解析し、領域にわけた。Borodovsky M.らによってマルコフモデルを用いて大腸菌のClass?遺伝子群(大腸菌中の水平移動遺伝子群)から作成された3次マトリックスで、プログラムGeneMarkを用いて確率を計算した。この確率は、マトリックスを作成する際に用いられた遺伝子群の示すDNA配列への相似性を示すものである。更に言えば、その確率が高ければ、マトリックスを作成する際に用いられた遺伝子群の特徴を持っている可能性が高いといえる。すなわち、マルコフモデルを用いて得られた確率によって分けられた領域は、起源の違いを示す可能性があることを示している。  Flavin oxidoreductase を除く5遺伝子に関しては、分けられた領域と、CATHのクラス、アーキテクチャー、トポロジーに基づいて分類されたドメインが対応した。すなわち、起源の違いを表している可能性がある、この分けられた領域と、立体構造の部品構造の領域と関連性があることが明らかになった。  進化の過程で生じた機能性タンパク質の立体構造はそれまでに存在していた各立体構造部品が集められ、新しい機能を創り出したという仮説を、機能性たんぱく遺伝子のDNA配列を用いて明らかにすることができた。
  • 大福 裕子, 田中 秀夫, 上林 正巳
    原稿種別:  
    専門分野: 分子計算
    2002 年 2 巻 4 号 p. 137-146
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/12/31
    ジャーナル フリー
    X線結晶構造解析により立体構造が決定され、その立体構造がマルチドメインから構成されるEscherichia coli由来のFlavodoxin reductaseの塩基配列をMarkov modelを用いて解析したところ、この遺伝子は7つの領域 (I-?) にわけることができ、CATH で分類された立体構造上のドメインと対応していた。さらに、CATHのドメインとX線結晶構造解析により同定されたドメインは一致している。各領域の塩基配列を用いて, DDBJ ALL databaseに対してFASTA相同性検索を行った。Flavodoxin reductase のFADが結合するFADドメインに属する領域?+?はAzotobacter vinelanndii由来のNADPH:ferredoxin reductaseのFAD結合部位と相同性を示した。一方、Azotobacter   vinelanndii由来のNADPH:ferredoxin reductaseとEscherichia coli由来のFlavodoxin reductaseの立体構造のRMSDは1.49Åと、立体構造全体が非常によく似ている、アミノ酸配列では、そのN末端領域が、非常に相同性が高いと報告されている。このように、立体構造、アミノ酸配列及び分けられたDNA配列の3つの場合で、たんぱく質の部分によって得られる結果が異なっていることが明らかになった。NADP/NADPHが結合する領域であるNADPドメインに属する領域?は、Escherichia coli のplasmid pKM101由来の接合遺伝子と、領域?+VIは、Ralstonia sp.CH34のpMOL30由来のczcB 遺伝子及び領域?はStreptococcus pneumoniae のbacteriophage Cp-1由来のtailタンパク質と推定されたorf17と相同性を示した。NADPドメインはbacteriophage由来のtailタンパク質、プラスミド由来のカチオン排出遺伝子及び接合遺伝子が融合したものであると考えられる。またFADドメインを構成する領域に相同性を示したAzotobacter vinelanndiiのNADPH:ferredoxin reductase は、真正細菌のクロモソームにコードされている。NADPドメインを構成する領域に相同性を示した遺伝子は、プラスミドまたは真正細菌のファージにコードされている遺伝子であった。マルコフモデル及び立体構造から分けられるFlavodoxin reductaseの領域は、部品としての立体構造が記憶されている、他の生物種からの取り込まれたDNA配列から構成されていると考えた。
  • 森 健一, 畑 晶之, 根矢 三郎, 星野 忠次
    原稿種別:  
    専門分野: 分子計算
    2002 年 2 巻 4 号 p. 147-155
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/12/31
    ジャーナル フリー
    Ras蛋白質は低分子量G蛋白質の一種であり、不活性なGDP結合型と活性なGTP結合型をサイクルする分子スイッチとして細胞内で働き、その活性にMg2+イオンを必要とする。他の低分子量G蛋白質において、Mg2+の解離がGDP/GTP 交換反応を促進するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)との結合に重要であることが分かり、Mg2+の配位していない低分子量G蛋白質の構造に関する情報が、その活性化メカニズムの解明に必要になってきている。今回、我々は、GDP の結合しているRas 蛋白質を用いて、Mg2+の配位している構造と配位していない構造を構築し、分子動力学シミュレーションを用いて、それらの挙動を解析した。その結果、Mg2+の配位していない構造では、スイッチ1、スイッチ2と呼ばれる領域の揺らぎが激しく、GDP 結合領域とスイッチ領域の間に、大きな溝が生じることが分かった。また、Mg2+の配位していない構造は、Ras のGEFであるSOSと結合した状態のRas に非常に似ていることが分かった。これらの結果から、Mg2+がRas とSOS の結合を制御していることが明らかになり、また、GDP の解離が段階的反応であることが示唆される。今回の結果は、細胞内Mg2+ 濃度が細胞内情報伝達を制御している可能性があることを示唆している。
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