抄録
我々は、溶液(水とイオン)中で蛋白質とリガンドから成る系に対して分子動力学シミュレーションを行い、生体分子接近過程のメカニズムを研究した。2つの生体分子は、シミュレーションの初期構造では最短距離で 30 Å 離して配置したが、シミュレーションの間、2つの生体分子は接近し接触した。水分子は拡散運動をしているにもかかわらず、 二つの生体分子の間の領域では水分子の向きが秩序化される傾向が現れ、空間にコヒーレントなパターン(溶媒双極子場)が見られた。秩序化の度合いは、2つの生体分子の距離と協調的に振る舞った。この結果は、溶媒双極子場は2つの生体高分子を介して相互作用することを強く示唆する。コヒーレントな秩序化の有効距離(すなわち溶媒双極子場による有効相互作用レンジ)は 20 Å以上に及んだ。また、2つの生体分子を結ぶような橋状構造が見られた。この秩序化の生物学的または物理化学的な意味を考察した。